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2025.01.22

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錦ヶ丘の給食No.5☆子どもの味覚形成と食べる時の姿勢

錦ヶ丘ならではの「こだわりの給食」

今年度錦ヶ丘に転職しました、栄養士の吉田です。錦ヶ丘の給食に携わり気づいたこと・驚いたことをシリーズ化してブログにまとめています。

5回目の今回は『幼児期の味覚形成と食べるときの姿勢』についてご紹介します。

離乳食を経て食への興味を引き出し、これからどんどん楽しい食の世界を広げていく段階にある幼児期は、味覚形成がされる大切な時期といわれています。

子どもの頃に食べたものは、大人になっても「こんなの食べていたな~」とふと思い出す瞬間もあるのではないでしょうか😊

誤嚥窒息の死亡事故のニュースが流れる度に、今まで給食に出ていたりんごやうずらの卵など食材自体をあえて料理に入れない、献立に反映させないという対策をとっている施設も増えてきたと感じています。安心安全の食事提供が必要とされている反面、大切な時期に大人が子どもの食べ物を制限してしまうのは食経験を豊かにすることを遠ざけてしまう側面もあります。

今回は、安全な環境作り・食事提供をしつつ子ども達にたくさんの食材に触れてもらえるよう、錦ヶ丘で取り入れていることを紹介します。

 

幼児期の味覚形成

私たちが感じる【味覚】は大きく5つに分かれています。

甘味、酸味、苦味、塩味、旨味です。5つの味を口内全体や舌や喉などにある【味蕾】という器官で味を感じとっています。

この5つの味には、それぞれ役割があります。

・甘味は、ご飯やパンに含まれる炭水化物(エネルギー源)の存在を教える役割。

・酸味は、腐敗物を教える役割。

・苦味は、毒物を教える役割。

・塩味は、ミネラルを教える役割。

・旨味は、アミノ酸(たんぱく質)を教える役割。

このように味覚には、体にとっていい物なのか、危険なのかを知らせる役割があります。私たちの体に必要な甘味、塩味、旨味は本能的に『美味しい』と感じる味です。その一方で、酸味や苦味は体を守るために受け入れられない味としての役割があるため、食経験が少ない子ども達にとってはあまり好ましい味ではなく、苦手意識があることは当たり前のことなのです。子ども達は食経験を重ねて、少しずつ酸味や苦味も美味しいと感じるようになり、食の幅が広がり豊かな食生活を送ることができるようになります。

自分たちで育てたピーマンの丸かじり

 

「おいしいね」の言葉かけ

子どもの食事が進まないのは苦手な味だから仕方ない、まだ味覚形成が未熟だからと食卓にあえて食べない物を出さない時もあるかと思います。

もちろんそのような日があってもいいのですが、ぜひ食べなくても子どもの目の前に料理を出してみてください。

幼児期の食事は完食が目的ではありません。完食を強要してしまうと食事に対するマイナスなイメージがついてしまいより食べなくなりがちになるからです💦

大人が子どもの目の前で「これおいしいね!」と言いながら食べるだけでも子どもは興味がわいてきます。反対に「これあんまり美味しくないね」と言いながら食べるとこれは美味しくないんだと食べる前からイメージがついてしまうので、できるだ「美味しくない」より「美味しい」を言葉にだしてみてください♪

「ちょっとだけたべてみる!」は子どもにとって大きな一歩です。食べてみて「やっぱり食べられなかった」と知ることも経験です。

「これ食べられなかったけどこれならどう?」と食の提案したり、食べ物から料理になっていく過程を見せて興味を引き出すのも方法の1つですよ✨

 

幼児期の食事

幼児期は食べられる食材も増え、これ食べたい!あれ食べたくない!と自我の形成とともに好き嫌いが出てくる時期でもあります。成長の過程では大切な事ですが、私たち大人にも感情があるので「今日はちょっと好き嫌いの対応するのきついな…」と感じる日もあるのではないでしょうか。

せっかく作った料理も、いつもは食べるのに機嫌が悪かったり体調が悪かったりすると急に食べなくなったりしますよね💦

幼児期の食事は、食べることを楽しむことに加え、これから豊かになる食生活の準備期間とも言えます。

この準備期間は、食事を通して口腔や舌の感覚、下あごの使い方を訓練している過程でもあるので、誤嚥しやすい状態とされており、見守りが欠かせません。

 

そもそも誤嚥・窒息とは

【誤嚥】とは、口に入れたものが何らかの拍子で気管(空気の通り道)に入り込んでしまう状態のことを言います。気管に異物が引っかかり空気の通り道が悪くなり、せき込みや喘鳴などの症状が見られます。誤嚥の中でも特に怖いとされているのが、気管に異物が詰まってしまう窒息と言われています。息ができなくなるため意識不明に至ることがあります。

先日行われた園内研修で学んだのですが、誤嚥窒息の状態になると、ドラマのように首に手を当てて苦しむという姿は見られず、スッと意識がなくなるとのことでした。

誤嚥窒息の事故報告書を読むと、一瞬だけ目を離して振り向いたら窒息していた、と書いてあるのを見かけますが、それは誤嚥窒息=苦しむ姿があると認識していたからなのではないかと研修を通して感じました。

言葉の響きが似ているとして、【誤飲】があります。誤飲は食べたり飲んだりしてはいけない異物を飲み込んでしまうことを言います。子どもの誤飲によく見られるものとして、たばこや医薬品などがあります。

 

食材に問題がある?

そもそも、誤嚥窒息は食材が原因なのでしょうか。誤嚥しやすい食べ物としてミニトマトやぶどうなど丸いもの、固いもの、表面がツルっとしたものと言われていますが、実際に誤嚥窒息の原因になった食材で多いのは、私たちの主食である米やパンです。米は口の中で食塊を作り飲み込むまでに粘度が出てきます。パンは口の水分をとられ、嚥下する力が弱いと気管に入ってしまう恐れがあります。

誤嚥窒息がおきる危険性があるからその食材を避けるのではなく、どのようにしたら安全に食べられるのか、楽しく食事ができるためにはどんな事ができるのか大人が工夫していく必要があると感じます。

上記の写真のように、調理するうえで安全面を考慮し対策していることがいくつもあります。

餅は誤嚥に繋がる可能性が高いので、3歳以上からの提供にしています。通常の餅だと弾力があり、飲み込みづらいことから、しゃぶしゃぶ用の餅を焼いて提供しています。

また、春雨やきくらげは細く弾力があるためツルっと喉にいきやすく、ウインナーの皮は嚙み切れにくく、輪切りだとその大きさがちょうど気道を塞いでしまう可能性がるため、それらを防ぐために調理方法を工夫しています。

これらは、教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドラインにも記載されています。

その食べ物の特性や形態、食事提供するにあたっての注意点など細かく決められており、どのように提供したら子どもたちは食べやすいのか、安全に食事を楽しめるような環境作りも考慮しています。

食べる時の姿

子どもはお腹がすいていたり好きなメニューだったりすると、かき込んで食べたり急いで食べる姿が見られます。また、食べ物を口に入れた状態で友達や大人と会話をしたり、立ち歩いてしまったりと、経験が少ないからこそしてしまうことも多くあります。

そのような時、錦ヶ丘では理由をセットに子ども達に伝えるようにしています。ただ頭ごなしに注意するのではなく、「ゆっくり食べないと喉に詰まって苦しくなってしまうよ」「お友だちとお話しするの楽しいね、でも今はご飯を食べる時間だから後からお話しよう」と子どもの気持ちを受け止めつつ、こうしてほしいという大人の意見を伝えます。

また、三角食べを推奨しているわけではありませんが、おかずだけご飯だけを食べてる子ども達には、水分(汁物)を間に挟むよう声掛けを行っています。

姿勢も確認してみましょう

子どもたちの食べる姿勢で重要なのは足元です。

椅子とテーブルを使用して食事をするご家庭もあるかと思いますが、子ども達はどのような姿勢で食事をしていますか?

椅子に座った時、子どもの足は浮いていませんか?ブラブラして足が遊んでいませんか?

このような状態だと自分の体幹を使って座ることが難しく、背もたれ頼りになったり体が曲がっていたりして食べ物を飲み込むことができません。

足が床につくことで、自然と背筋が伸び食事をする理想的な姿勢を保つことができます。

子どもの集中力が保てる時間はそれほど長くないので、集中力が途切れてしまい足元が床についていても足をブラブラさせたり遊びながら食べ始める事もあると思います。

そのような時は、「今はご飯を食べる時間だよ」と声をかけ、それでも食事を続けることが難しい場合は一旦ご飯の時間は終わり、と時間で区切るということを取り入れてみてください。

大人が声を掛け過ぎることで子ども達にとって食事が楽しくない時間として認識されたり、泣いて食べ物を喉に詰まらせたりするより、子どものうちは食事は最低限のマナーを守りつつ楽しむものというイメージを持ってもらえたらと思います。

 

大人の対応

厚生労働省から出ている保育所における食事の提供ガイドラインに、

【食物の選択も食行動の1つであり、そこには安全性、経済性、嗜好など様々な判断がある。乳幼児は自ら食物を選択できるわけではなく、その種類や質や量の決定は保護者や保育士等に委ねられる。そしてこの信頼関係により、子どもは安心して食事を摂り、生きていくために最も重要な食物を与えてくれる人への信頼は、より深いものになる】

と書いてあります。

子どもの安全を確保しつつ、食生活を豊かにするためには大人の協力は子どもにとって欠かせません。

では、具体的にどのような対応をしたらいいのかご紹介します✨

☆ゆとりある時間を確保する

☆早食いにならないように、集中してよく噛む時間を作る

☆前歯が抜けている場合は、小さくちぎり奥歯でしっかり噛むように声掛けする

☆食事の際は、食べ物と水分(汁物)がバランスよくとれるように声掛けする

☆テレビを消して会話を楽しんだり、一緒に食べている大人のマナーを真似する機会を作る

☆注意しすぎず食事を楽しむことを大事にする

 

上記のような対応をご紹介しましたが、仕事で疲れていたり、そんな余裕ない…と感じたりすることもあると思います。

毎日できなくても大丈夫です。大人も子どももゆとりのある時にぜひ取り入れてみてください😊

 

最後に

私たちが生きる上で欠かせない食事は、1日3回、人が80年生きるとしたとき、食事の回数は約8万7千回にもなると言われています。

ニュースで窒息事故が起こるたびに献立からその食材自体を消したり、小さく小さく刻んだりと私たちが子どもの頃に比べ、食に対し難しいイメージを持つ方も増えてきたように感じます。

もちろん発達状況により咀嚼や嚥下を考慮し工夫できる点もあると思いますが、今後の食生活を豊かに育むためにはどのようなことが私たちにできるのか常に考え、子ども達に「食べることは生きる事。食べるって楽しい!」と感じてもらえるような、よりよい給食作りに励みたいと思います。

 

参考文献:厚生労働省 保育所における食事の提供ガイドライン

保育も子育ても新しく!21世紀の証拠に基づく「子ども育て」の本 著/掛札逸美・酒井初恵・髙木早智子

文責:吉田

 

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