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2022.03.04

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人生に必要な知恵はすべて”こども園”の砂場で学んでいる

『人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ』という本があります。

 

このタイトルを聞いたことがある方、本ということは知らずとも、言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

その本の中に、以下のような文章があります。

 

 

人間、どう生きるか、どのようにふるまい、どんな気持ちで日々を送ればいいか、本当に知っていなくてはならないことを、わたしは全部残らず幼稚園で教わった。

人生の知恵は大学院と言うてっぺんにあるのではなく、日曜学校の砂場に埋まっていたのである。

何でもみんなで分け合うこと。 ずるをしないこと。 人をぶたないこと。 使ったものは必ずもとのところに戻すこと。 ~以下省略~

 

 

錦ヶ丘の子ども達にとって、砂場はとても魅力的な空間です。

自然いっぱいの のはら園、思い切り走り回れる広々とした 園舎前の園庭とはまた違った、砂場。

そこで見られた、年長組の子ども達の姿をお伝えします。

まさに、『人生に必要な知恵を全て砂場で学んでいる』子ども達の様子です。

 

 

「大きなお山が作りたい」


卒園までにやりたいことを出し合い、それをもとに活動をしている子ども達。

その日は、園庭でAさんの「かけっこ」と、Bくんのやりたいこと「しっぽ取り」をした後に、Tくんのやりたいことである「大きなお山作り」をすることになりました。

一緒にやりたい!と思いをもった子ども達が、約10人ほど集まりました。

 

 

「こっちとこっち、2つ やまを作りたいから、みんなおねがいね」と、Tくんが言います。他の子ども達も「オッケー!」と、とても前向き。

「やりたい!」の主人公であるTくんは、みんなに指示を出しすぎるわけでもなく、かと言って、自分だけで進めるわけでもなく、絶妙なバランスで全体を見ながら、自分も一生懸命山づくりを進めます。

 

そして、周りの仲間達も、困った時や迷った時にはTくんにすぐ声をかけ、相談します。

「ここ、〇〇だと思うんだけど〜なんだよね」「じゃあ○○してみて!」「わかった!」

こんな会話が、いくつもいくつも出てくる子ども達。まさに、一つのプロジェクトに向かってみんなで進んでいくチームそのものです。

 

 

 

「なんでTくんばっかりなの?」


山づくりも中盤、何してるんだろう?と気になって、他のクラスの友達がやってきました。

うらやましさもあったのかもしれません、ちょっぴり意地悪な口調で、「なんで困った時はTくんにばっかり聞くの?Tくんの言うことばかり聞いてるの?」と、山づくりチームに尋ねました。

するとある子が手を止め、顔を上げて、その子に言いました。

「この山づくりは、Tくんが卒園までにやりたいって言ってたことなんだよ。Tくんのやりたいことを、みんなで一緒に叶えてるから、Tくんに話を聞くんだよ。」

何のために自分達はこの活動をしているのか、ちゃんと理解していること。そして、一人の友達の思いを叶えるために、一つのチームとしてどうしたらいいのか子ども達なりにしっかり考え、実行していること。

なんと素晴らしいことでしょう。

 

 

 

せっせと山を作る中で、時にはトラブルも発生します。

 

山が崩れた!


 

目標の高さ(Tくんの腰)を超えたのを確認して、トンネルを掘り始めました。

 

 

それぞれが各々の方向から掘り進めると、いきなり崩落!!

「「あーーー!」」とみんな声をあげますが、誰一人怒りません。

「少し小さくなってしまった!」「穴を埋めろー!」「なんで崩れたんだろう!?」「穴掘りすぎたかな?」

トラブルさえも、この子たちにとっては楽しむチャンスの一つなのかもしれないとさえ思う姿でした。自己回復力(レジリエンス)や、探究心の育ちを感じます。

 

 

 

 

 

僕が使いたい!!


他で遊んでいた子どもの怪我の対応をして砂場に戻ると、男児2人がスコップを巡り激しく言い合いをしていました。

「僕が使ってたんだよ!」

「でもいま使ってなかったよねぇ、そこにずっと置いてあったじゃん!だから使っていいでしょ!」

「でも僕が使ってたの!!」

「でも使ってなくて置いてたじゃん!」…の繰り返し。

 

言い合いが平行線だったため、「ちょっと待って」と止めることも必要だったかもしれません。しかし、その2人のしっかりとした自己主張の姿は、まさに圧巻。わたしは少し離れた場所から見守り続けました。

日頃から“僕は““わたしは“で、自分の思いを伝える経験を重ねてきた彼らだからこそできる喧嘩です。

言い合いを見かねたTくんが、しばらくして「もうさ、ジャンケンしたら?」と声をかけました。

Tくんという第三者の介入で、少しクールダウンもできたのでしょう、2人は目を合わせてジャンケンをし、勝敗でスコップの使い手が決まりました。

負けたからと言って、その後に引きずることもなく、すぐに切り替えて活動に戻る2人。

まだ5歳・6歳の彼らの社会性、そして、自分の思いを伝える力に脱帽です。

 

 

 

 

そろそろおしまい


子ども達がもっと満足いくまで活動できるようにと思い、予定していた時間を少しずつ延ばしていきましたが、それももう限界。

給食の時間が近付き、「あと5分で終わりね」と声を掛けました。

「よし!じゃあ、もう掘るのは終わりにして、水を入れよう!、〇〇くん達お水持ってきて!」「ここだけはあと少し掘りたいからお願い!」

いよいよ仕上げです。

 

 

その時間内で達成できる目標は何なのかを考える力。

さらに、その目標を達成するためにはどうしたらいいのかを考える力。

いつまでにどうしなければならないのか、見通しを持つ力。

集団で何かをやり遂げるために必要な力の育ちを感じます。

繰り返しになりますが、彼らはまだ5歳・6歳です。

 

 

 

 

長くなってしまいましたが、この全てが、わずか50分ほどの活動の中での姿です。

まさに、『人生に必要な知恵は全て幼稚園の砂場で学んでいる』。

そしてこども園の砂場だけではなく、日常様々な活動の積み重ねがこの砂場での子ども達の姿につながっているのだと、卒園を間近に控えた彼らを見て思いました。

 

 

自分のやりたいことを見つけられる。

自分の思いを伝えられる。

他者の思いを聞くことができる。

みんなで思いを合わせて一つの目標に向かっていける。

何かくじけることがあってもバネのように跳ね返せる。

錦ヶ丘で、心と身体が大きく育った彼らが、これから先の世界でどのように羽ばたいていくのだろう… 不安定な、不確実な世の中だと言われているけど、きっと、この子達なら大丈夫!

心からそう思えるひと時でした。

 

この子達の将来は、どんな大人になっているのでしょう。とても楽しみです。

 

 

 

引用:『人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ』(河出文庫)ロバート・フルガム 著、 池央耿 翻訳

 

 

文責:迫田

 

 

 

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