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2024.03.25

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あなたは特別な存在!~性教育サークルタイム~

錦ヶ丘では、子どもの人権を尊重した保育として、日頃から様々な取り組みを行っています。

私たちの取り組みに興味を持ってくださる方が増え、今年度は0歳からの性教育について南日本新聞社の方が取材に来てくださったり、昨年5月に施工された鹿児島市の『こどもの未来応援条例』記念イベントの事例発表の依頼を頂いたりしました。

 

1月末に行われた鹿児島市のイベントでの錦ヶ丘の発表テーマは『子どもの主体性を尊重した保育』。20分間という短い時間ではありましたが、『子どもと大人は人として対等』であり『子どもを一人の人として尊重する』意識を全職員がもっていることをお伝えしたうえで、

  • 保育者を“○○先生”と呼んでいないこと(子どもと大人は対等な立場)

  • 思いを伝え合うサークルタイム(自分の思いを伝え、相手の思いに耳を傾ける)

  • 0歳からの性教育(触れる時には必ず声をかける、包括的性教育)

  • 大人が学びを深めるための様々な取り組み(職員間の研修や人権ミーティング)

上記4つについて発表をしました。

私自身、発表の準備を進める中で、改めて自分たちが日々行っている子どもへの関わりや取り組みについて考える中で、錦ヶ丘の毎日は子ども達の主体性を尊重するために、上記の4つ以外にも「いただきます」を一斉にしていないことや、給食の完食を求めていないこと等、他にも様々なことをしていると再確認することができたと感じています。

 

この中でもお伝えした『0歳からの性教育』。「0歳から!?」と驚かれる方も多いのではないでしょうか。

錦ヶ丘の性教育は、いわゆる“包括的性教育”です。性器のことや妊娠~出産を伝えるだけではなく、子どもを一人の人として尊重し、0歳児でもおむつを替えるときに「おむつ脱ぐよ」と必ず一言添えたり、『男の子だから・女の子なのに』というジェンダー差別をしないように“その子自身”を大切に受け止めたりという、大人の心がけを大切にしています。また、子どもや保護者が性教育について触れるきっかけになるよう、保育室に性に関する絵本を置いたり、思春期保健相談士・デートDVプログラムファシリテーターの資格を持つ養護教諭が保護者向けの講座を行ったり等の取り組みも、積極的に行っています。

 

そんな中で、2~3月に新しい取り組みとして、『性教育サークルタイム』を行いました。

 

性教育サークルタイム

今年度、人権担当の職員で毎月ミーティングをする中でやってみようと話題に挙がったのが『性教育サークルタイム』です。

『自分の生まれた過程を知ったり、身体を大切にするために必要なことについて考えたりする経験を通して、自分や家族、他者を大切にする心を育てる。』というねらいをもとに、2月に年長(5歳児)、3月に年中(4歳児)と年少(3歳児)を対象に10名前後の子ども達と保育者がグループになり、1冊の絵本を読んで感じたことを伝え合う時間として行いました。

使用した絵本は、こちらの3冊です。

  • 『ぼくのはなし』作・絵: 和歌山 静子/出版社: 童心社
  • 『わたしのはなし』作・絵: 山本 直英 和歌山 静子/出版社: 童心社
  • 『だいじ だいじ どーこだ?』作: 遠見 才希子/出版社: 大泉書店

これらの絵本の中には、妊娠~出産について触れるページがあり、「お父さん・お母さん」という表記がされています。今回のサークルタイムでは、社会の中でステップファミリーなどの様々な家族の形が増えていることを踏まえ、「お父さん・お母さん」ではなく「男の人・女の人」という表現をしました。

年長(5歳児)絵本『ぼくのはなし』『わたしのはなし』

『ぼくのはなし』では、妊娠~出産について知ることで、絵本の中に小さな点で記載されている受精卵の大きさに興味を持ち「はじめは大人も子どももみんなこんなに小さかったんだね」と不思議に感じたり、子宮の中を泳ぐ精子の絵に「到着しなかった精子はどうなってしまうんだろう?」と考えたりする中で、「古くなった人はどうして死ぬの?」「心臓はどこにある?」等、命について考える姿も見られました。

また、出産についての話題の中では「お母さんのおなかには傷があるよ」と帝王切開について話す子どもや「白黒の写真(エコー写真)を見たことがある」という子どもも。絵本を読み、友達や大人と“生まれる”ということについて考える中で、自分自身のこととつなげて考える機会にもなったようです。

『わたしのはなし』では、「知らない人から何かされそうになった時には、こども110番のいえがあるよね」と、子ども達から自然と出てくる言葉に、今までの経験の中で学んだ知識がしっかり自分のものになっていることを感じ、感心しました。他にも「将来好きな人ができて触りたくなったらどうする?」という大人の問いに「我慢する」「でも我慢しすぎたら爆発しちゃうよ」「相手に『触っていい?』って聞けばいいんだよ」という大人顔負けのやり取りも。

就学前という、これから新しい世界に飛び出していく年長組の子ども達だからこそのサークルタイムの内容に、大人の私たちが沢山学びを得る時間となりました。

年中(4歳児)絵本『ぼくのはなし』『わたしのはなし』

『ぼくのはなし』では、年長同様、受精卵の大きさに興味津々だった子ども達。命の尊さを感じるのはまだ少し先かもしれませんが、“大きさ”というわかりやすい視点から、「なんで?」「すごい!」と性への興味をもつきっかけになったのかなと思います。

『わたしのはなし』では、年長組で自然と出てきた“こども110番のいえ”を大人が伝えると子どもたちは「?」という反応。小学校就学に向けて少しずつ地域に目を向ける中で知ることが、年長組の1年で沢山あるんだなぁ、子どもの1年ってすごいと、大人自身が新しく知るきっかけになりました。

まだまだピンとこない様子だった年中組の子ども達。年長の1年間の折々で2冊の絵本を読んでいくことで、子ども達自身のつぶやきや考えにどんな変化が出てくるのかが楽しみです。

年少(3歳児)絵本『だいじ だいじ どーこだ?』

この絵本の中には、見開きで沢山のパンツの絵が出てくるページがあります。「パンツ」「うんち」などの言葉が面白くて何度も言ってしまうのは、3歳児の発達の中でよくある姿。きっとサークルタイムの中でもそうなのかな…?と思っていたら、笑いが止まらない子どももいる一方で、「その言葉おもしろく言うの嫌だ」と嫌悪感を示す子どもや、じーっと真剣に絵本の内容に耳を傾ける子どもの姿がありました。

3歳児も心が次第に育ち、“恥ずかしい”という気持ちが芽生えたり、プライベートゾーンの意味について考えたりし始めているのだと感じる姿でした。

3歳児~5歳児まで、年齢に応じて様々な姿が見られた今回の性教育サークルタイム。保育者が意図的にこのような機会を設けることで、それぞれの発達の中での子ども達の純粋な「どうして?」や「もっと知りたい!」を沢山引き出すことができたと感じています。

『性教育』と聞くとなんだか恥ずかしい、まだ乳幼児には早いと思うのは大人だけであって、子ども達は純粋に知りたがっています。そして、そこにきちんと大人が向き合うことが、このサークルタイムのねらいにもあった『自分や家族、他者を大切にする心を育てる』ことにつながるのだと感じる、今回のサークルタイムとなりました。

 

『子どもの人権を尊重する』とは…

一昨年から“不適切保育”という言葉が世の中で多く見聞きされるようになりました。それまでももちろん子どもを大切にすることを意識してはいたものの、“不適切保育”という言葉をきっかけに、保育や子どもとの関わりについて今まで以上に多くの場面で・多くの方から目が向けられるようになったと感じています。

今年一年、人権教育担当として、保育者という専門家として「子どもを大切にするって具体的にどういうこと?」「そのために必要なことは?」という、日々言葉にすることは少ないけれどとても大切で根幹の部分であることを、今まで以上にじっくり考えたり、言語化したりすることが多くありました。

 

一年を通して強く感じたのは、子どもがこれからの長い人生を生きていく力の土台になるのが、ありのままを大切にされる経験だということです。

「あなたは、あなたらしく、そのままでいいんだよ」「生まれてきてくれてありがとう」「そのままのあなたがとても大切で、大好きだよ」ということを、乳幼児に沢山、まるごと受け止めてもらう経験を通して伝えていくことが、大人の大事な役割なのではないでしょうか。

 

これからを生きるすべての子ども達が、自分を大切に、そして、誰かのことも大切にできる心が育つことを願って。

日常でできる小さなことを大切にしながら、子ども達と共に生活していきたいと思います。

 

【参考】

・子どもに伝えるべき8つのポイントとは?家庭でできる「包括的性教育」のススメ【5~8歳編】(重見大介) – エキスパート – Yahoo!ニュース

・絵本ナビ『ぼくのはなし』『わたしのはなし』『だいじ だいじ どーこだ?』

 

文責:迫田

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