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2024.09.20

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あなたの素敵なところはね…

「あなたの素敵なところは何ですか?」

このように言葉をかけられたら、あなたは何と答えますか?

「わたしなんて全然素敵なところ無いですよ~」と、遠慮してしまいますか?

「滅多に風邪をひかないくらい身体が丈夫です!」や、「まじめに仕事を頑張っているところかな」等、自分が自分に思う『素敵なところ』を答えられますか?

 

ある日、とあるクラスの担任と保育室の前で話をしていて話題に挙がったのが、「自分の強みを認められない子どもが多い」ということです。「○○くんに『○○くんはこんなところが素敵だよね』と伝えたら、『そんなことない』と言われたんですよね…。周りにいた他の子にも『みんなは自分のどんなところが素敵だと思う?』と尋ねたけど、みんな『えー』という感じで…」と、その担任もショックな様子。話を聞いて、私もびっくりしました。

確かに日本は「いやいや私なんて…」と謙遜する文化があります。しかし、生まれて数年の、まだまだ夢で溢れる幼児期の子ども達が「自分の素敵なところなんて…」と思うなんて… 子どもの育ちを支える、これからを生き抜く力を育てる役割の私たちは、どうしたらいいのだろうと考えてしまいます。

自己肯定感・自己効力感・自己有用感

自分の素敵なところや自分の強みを考えたときによく出てくるキーワードが、『自己肯定感』と『自己効力感』、『自己有用感』です。

この3つの言葉は、似ているようで全く違った概念があります。

自己肯定感とは…

自分自身の存在や価値を肯定できる・認められる感覚です。この感覚が育っていると、「できてもできなくても」ありのままの自分のことを認めたり、「私はこう思う」と自己主張したりすることができます。

自己効力感とは…

目標に向かって行動する中で「自分ならできる」と感じる感覚です。この感覚が育っていると、難しいことに挑戦するときにも「やってみよう」と自分を信じ、自分で決め、実行に移すことができます。

自己有用感とは…

自分が誰かに必要とされていると感じられる感覚です。自己肯定感や自己効力感は“自分で自分を評価する”中で獲得されますが、自己有用感は“他者からの評価によって”獲得されると言われています。相手の存在なしには育たない感覚であり、この感覚が育っていると「○○を実現するには私の力が必要なんだ」と自信につながったり、人との関わりを楽しんだりすることができます。

 

似ているようで違う3つの言葉ですが、どちらも心について考える上でとても大切な概念です。日々、集団の中の子ども達と関わっている一人の大人として、自分を見つめて育つ感覚も、集団のなかだからこそ育つ感覚も、どちらも大切にしていきたいと私は思います。

日本の子どもの自己肯定感・自己効力感

子どもの自己肯定感や自己効力感について調べてみると、ユニセフの「レポートカード16」という、先進国の子どもの幸福度について調査した報告書がありました。

この報告書によると、日本の子ども達はの身体的健康(死亡率や肥満率など)は1位ですが、精神的幸福度(生活満足度や自殺率)は最低の37位であるそうです。

 

また、日本・アメリカ・中国・韓国の4か国の高校生を対象に行った調査をまとめた文部科学省の発表でも、「自分はダメな人間だと思うことがある」と答えた日本の子どもは、他3か国が3~5割である中、7割を超えています。

この報告書の中では、日本の結果に対して『自分自身を客観視できていることの表れではある』と言いつつも、『他者との比較の中で、自分に自信がなかったり無価値な存在だと思っていたりすることの表れである可能性がある』ことから、『自己効力感の意識や、自己受容・自己主張・自己決定の経験をバランスよく育むことが重要である』と述べられています。

こども園が大事にしていること

上記の最後の部分、『自己効力感の意識や、自己受容・自己主張・自己決定の経験をバランスよく育むことが重要である』という部分を読んだときに、私は「錦ヶ丘が大事にしていることが沢山あるじゃないか!」と感じました。

①「やってみたい」を支える

日常を何よりも大切にしているこども園では、生活の中に大小様々な“挑戦”があります。

例えば、「自分でやりたい!」という着替えの場面。洋服の上下を確認し、身体の部位を通す動きは自分の身体の感覚が育っていない子どもには大きな挑戦です。自分で「できた!」は大きな自信につながります。大人は少しだけお手伝いしながら、子どもの「やりたい」を応援します。

他にも、クッキングの場面や身体を動かす遊びなど、「あんまり経験したことないけどやってみたいな」と感じる場面が沢山あります。時に後ろから手をまわし、大人が持っている感覚を子どもに伝えながら、子どもの挑戦を後押ししています。

②思いを伝え、受け止めてもらう経験

「思いを伝える」と聞いてまず出てくるのは『サークルタイム』です。自分の考えや感じたことを周りの友達や大人に伝え、他者の考えや感じたことを聞く時間であるサークルタイム。みんなで一つの答えを出すことを目的にするサークルタイムもあれば、思いを伝え合うことが目的のサークルタイムもあります。

大事なのは、考えていることや感じていることは、まるごとそのまま受け止めるということです。目に見えない感情を大事にしてもらった経験は、自分を大事にする心を育てることにつながると考えています。

③子どものタイミングを待つ

活動中に思うようにいかないことがあって気持ちが落ち込んでしまったり、なんだか元気が出なくてやりたい気持ちにならなかったりすることは自然なこと。もちろんその時の状況にもよりますが、私たちこども園の大人は基本的に「子どもの気持ちを無視して無理やり活動させる」ということはしていません。

「やってみようかな…」と子どもが自分自身で決めて一歩を踏み出すことは、何より大きな力でありステップです。自分のことは自分で決める、という経験が、自立・自律にもつながっていくと考えています。

④そのままのあなたを何よりも大切に

子どもを一人の人として尊重し、「あなたはあなたのままでいいんだよ」「どんなあなたでも受け止めるよ」ということを、言葉でもスキンシップでも表情でも、沢山伝えるようにしています。

心が大きく育つ過程の中にいる子ども達は、集団生活の中で、感情が動いて叩いてしまったり暴言を言ってしまったりすることもあります。してしまった行動は「よくなかったよ」と伝えつつも、気持ちはしっかり受け止め、その子自身を否定することがないように心がけています。

自分のことを大切にできる人に

これからは、変動的で、不確実で、複雑で、曖昧といわれるVUCAの時代です。そんな世の中を生きていく子ども達は、誰よりも自分で自分を信じ、自分で自分を応援できる人、自分のことを大切にできる人であってほしいと私は思います。

そのためにまずは、大人が子ども達一人ひとりを大事に受け止め、一人ひとりの素敵なところを沢山伝えていきませんか?「沢山苦手なことがあるけど、僕は○○だけは上手なんだよね」、「難しかったけど楽しかった!」、「今回はうまくいかなかったけど、次も挑戦してみたい!」…こんな言葉が子ども達からたくさん聞かれたら、最高じゃないか!と私は思います。

そして、お父さんお母さん、子どもの前で誰かから我が子が褒められたら、「そうなんです!」とまるごと受け止めてください。きっと、お子さんはものすごく嬉しいと思いますよ。

 

さあ、目の前の子どもに、「あなたの素敵なところ」、さっそく伝えてみませんか?

 

 

【参考・引用】

・自己肯定感、自己効力感、自己有用感はどう違う?意味や高め方を解説 https://surala.jp/school/column/3529/

・自己効力感とは?自己肯定感との違いや高める方法を解説-Talknote Magazine https://talknote.com/magazine/self-efficacy/#

・自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上(第十次提言)資料3-2  https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2017/06/23/1387211_08_1.pdf

・ユニセフ報告書「レポートカード16」先進国の子どもの幸福度をランキング 日本の子どもに関する結果 https://www.unicef.or.jp/report/20200902.html

 

 

文責:藤﨑

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