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2024.12.27
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私たちが伝える人権 【人権担当】
12月4日~10日までは世界人権週間でした。皆さんご存じでしたか?
たくさんの命を奪った長い大きな戦争が終わり、国連安全保障理事会では二度とこのような事が起こらないよう、1948年12月10日、世界人権宣言を提唱しました。これは、すべての人間が生まれながらに基本的人権を持っているということを、初めて公式に認めた宣言です。
人権とは、すべての人が生まれながらに持つ、自由であり尊厳と権利について平等であるという考え方。
つまり誰もが生まれながらにして持っている、人間らしく、自分らしく生きることのできる権利のことです。
今回は、子ども達と関わる中で、乳幼児期から「人権」を大事にしている私たちの保育についてお伝えします。
子ども達に伝えていること
たくさんの子ども達が生活するこども園。集団生活ではコミュニケーションが不可欠です。友達と一緒に遊ぶこともあれば、ひとりの時間を過ごすこともあります。
子ども達は遊びのなかで、こんな気持ちを抱きながら遊んでいます。
Aちゃん:「わたしはこうしたい!」
Bちゃん:「えーこのほうがいいよ」
Aちゃん:「いやだ!」
Bちゃん:「じゃあもういい!」
Aちゃん:「〇〇さんがこうしたいっていうのにいうこと聞いてくれない!」
というやり取りは保育の中でよく見られる光景です。
またひとりでじっくり絵本を見ていても、
Cちゃん:「〇〇さんその本わたしも読みたい!」
Cちゃん:「え、いまはぼくが読んでるからいやだ!」
という場面もあります。
さて、そんな時、私たち大人はどうすればいいでしょうか?
錦ヶ丘の大人はこうします。
まずはそれぞれの思いを聞き取り、気持ちを受容します。
そして、お互いの気持ちを「〇〇って思ったんだね」「〇〇ちゃんは△って思ったんだね」と代弁し、それぞれに伝えます。
それから自分の気持ちも相手の気持ちもある事を一緒に考えます。
そうすると、どうなるでしょうか…
子ども達は自分で気持ちを落ち着かせ、
「いっしょにあそぼう」、「つかっていいよ」、「こうしてみない?」
など気持ちを切り替えて次の遊びをはじめます。
もちろん、すべてがすぐに「いいよ」「どうぞ」というように気持ちに折り合いをつけて解決するわけではありません。
特に0歳児~3歳児くらいまではまだ自分の思いをうまく伝えられず、泣いて気持ちを訴えることもあります。
子どもの気持ちを受容する事は人権を大切にする保育だと捉えています。
自分もだいじ、相手もだいじ
すべての人が生まれながらに持つ、自由であり尊厳と権利について平等である
この考え方。もしかしたら人によっては、「自分がこうしたいからこれでいいじゃん。だって自由でしょう」、「自分さえよければいい」、「あなたも好きなようにしたらいいじゃない」という解釈をされるかもしれません。しかし、その解釈の仕方はいかがなものでしょうか?
一昔前、「人」と言う漢字はお互いに支えながら成り立つ。という解釈を知りました。
まさしくその通り。人はどうあがいても必ず自分と他者との関わりで生活が成り立ちます。ひとりで過ごしていても、生活するにあたり関わっているのは他者の力で作られているものばかりではありませんか。決してひとりで生きているのではありません。そのことを忘れると、「自分は一人で生きている」という錯覚に陥り、「じぶん主義」になってしまいます。そうなると、自分は大事にできても相手(他者)は大事にできず、何かと衝突したり、誰も信じられないというような環境になっていくのではないでしょうか。
そんな考え方で、子ども達はこれからの社会を生き抜いてけるのか。と考える中で私たちは保育をする中で、
「自分の気持ちも大事。でも相手にも気持ちはあるんだよ」
「私はこう思うよ。あなたの考えも聞かせて」
「あなたの気持ちもわかったよ。じゃあこれからどうしようか?」
と自分も相手も巻き込み、一緒に考えながらそれぞれが折り合いをつけ、自他を認めながら過ごすことを取り入れています。
すぐに理解することはできないかもしれませんが、繰り返し同じ関わりを行うことで、子ども達は様々な場面を経験し、「自分も大事」、「相手も大事」という意識を持つことができます。まだ自分の気持ちを衝動的に言葉や行動で表す子もいますが、その子の気持ちを受容し、相手の事も一緒に考えることで、時間が経つと気持ちが落ち着き、解決に向かうことができるようになってきているのも事実です。このような関わりを大人が率先していくことで、子ども達の社会性が育ってきたなと感じています。
大人同士は…
気持ちを正直に伝えてくれる子ども達はすごいなと思う反面、大人同士ではどうなのか…と考えると難しいなと感じることありませんか?家族でも職場でも自分の気持ちや考えを正直に伝えられていますか?
「本当はこうしたかったのに反対された」
「なんだか正直に伝えづらい」
「こう伝えてなんか言われるの嫌だな」
大人になると自分の気持ちを正直に伝えることができなくなる場面多々あると思います。
そんな時、錦ヶ丘ではこのように伝えるように気を付けています。
「私はこう思うんだけど、あなたはどう思う?」
一方的に自分の考えだけを言い切ると、自分は伝えられた!という満足感は得られますが、相手はどうでしょうか?きっと言い出しにくかったり、自分の気持ちを正直に伝えられなかったりするのではないでしょうか。
子ども達同様、私達職員も自分の考えもあるあるけれど、相手の考えもあるということを意識し、お互いの考えを伝えあいながら折り合いをつけたり、同意したりする。そして解決に向けて一緒に考える。ということが実践できていると思います。大人こそ「人権」本来の意義を考え、社会で実践していくべきではないかと考える毎日です。
人権とは
人権とは、すべての人が生まれながらに持つ、自由であり尊厳と権利について平等である
誰もが生まれながらにして持っている、人間らしく、自分らしく生きることのできる権利これは個の考え方はそれぞれであり、その考えは尊ばれるべきである。そしてその考えは実現できるし、誰もがその権利を実現できる。
という事です。でもそれは、自分だけでない、他人も一緒であることを忘れてはいけません。
自分の考えも大事にし、相手の考えも尊重することで、皆が自分らしく生きていける。
このことを忘れずに、これからも子ども達が心地よい未来を歩けるよう、「自分もだいじ、相手もだいじ」ということを伝え続け、私たち自身もこのことを実践していきたいと思います。
皆さんも身近な方と「人権」について考えたり、話したりしてみませんか?
文責:桑元