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2025.01.20

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自然やビオトープが持つ力を活かすために

先日、「こども環境管理士」の資格試験を受験し、無事にを資格を取得することができました。

 

こども環境管理士とは

「こども環境管理士」とは、錦ヶ丘も参加している「ビオトープコンクール」を主催している日本生態系協会が認証する資格で、「子ども達が目を輝かせて遊ぶ自然のある保育環境づくりのエキスパート」と言われています。

国の保育や幼児教育のあり方を示す「教育・保育要領」や「保育指針」には、幼い頃に本物の体験をすることやそれができるための環境づくりが重要であることが述べられています。自然を相手にした遊びの中では、子ども達の五感が刺激され、豊かな感性や思いやりの心が育まれたり、様々な発見や工夫から創造性や独創性が芽生えたり、他者と協力することで社会性や自発性が身についたりしていくと言われています。また、時には思い通りにならない経験ができるのも、自然の素晴らしさや面白さです。

そんな自然を生かした環境づくりを実践できる保育者であることを証明するものとして、「こども環境管理士」の資格が創設されました。

 

「こども環境管理士」の試験に向けて、ビオトープや自然などの基本的な知識から学ぶことで、錦ヶ丘のビオトープが持つ豊かさや大人の役割を改めて知ることができました。

自然が持つ力

「自然」は、「太陽光、土壌、水、大気、野生の生き物」の5つの要素に、その地域ならではの地形や気候などが加味されてできる、世界に二つとないものです。

一つひとつの要素を読み解くと、酸素や光合成、有機物などなど、根っこには化学があります。化学は「何でだろう?」という探究心や試行錯誤を引き出すとても良い材料だと私は考えています。もちろん、乳幼児が理解するにはとても難しいものです。しかし、物事の本質に向き合いながら、「もっと知りたい!」の心を育てることが、その先の人生の学びに向かう力になります。「面白いな」「もっと知りたいな」という心を育てるという点で、自然は最高の素材なのです。

また、自然の構成要素の一つ「土壌」について考えてみると、何気なく存在している土も1cm形成されるには100年単位の年月がかかり、人間の片足の広さには何十万匹もの小さな動物が生息しているそうです。こども園理事長の「足下に宇宙がある」という言葉があります。見えないけれど確かに存在している命があること、私たち人間もその大きな輪の中の一員であることを、子ども達と感じていける保育者でいたいものです。

ビオトープとESD

ビオトープとは、ドイツ語で生き物(BIO)が暮らす場所(TOP)を指します。

その中でも「園庭ビオトープ」は、子ども達の日常的な自然との触れ合い体験の場としての役割を持ち、自然との共存を題材にした「持続可能な開発のための教育(ESD)」の場と言われています。「持続可能な開発のための教育(ESD)」は、2014年にユネスコの会議で提唱されたもので、環境だけではなく人権や平和など、幅広い分野の教育のことを指すそうです。文科省のESDに関するページには、SDGsとの深いつながりもあると述べられています。

錦ヶ丘の保育でも、SDGsの園務担当職員がおり、チームを組みながら人権についてのサークルタイムを行ったり、二十四節季に関する掲示を行ったり、終戦記念日に合わせて平和に関する絵本を読んだりしています。また、給食室でも、できるだけ食材を無駄なく使う取り組みが日頃からなされています。

子ども達と一緒に取り組めるESDが、日常生活の中にまだまだたくさんありそうです。

 

面・線・点から考える錦ヶ丘のビオトープ

こども環境管理士の勉強の中で、ビオトープは、面・線・点それぞれの視点から構成を考えることを知りました。

面としてのビオトープ

草地や水辺、樹林などの様々な場のこと。錦ヶ丘のビオトープには、草地、樹林、水路、池、風車、橋、水田、壁面、砂地などのたくさんの要素があります。以前、ビオトープ管理士の方にお越しいただき、錦ヶ丘のビオトープについてお話をいただく機会がありました。その中で「こんなにたくさんの要素があるビオトープはなかなか無いですよ」と嬉しいコメントを頂いたこともあります。ビオトープというと生き物のイメージから、一見その要素とは関係ないように感じる風車や橋も、自然を感じるのに大きな役割を果たしているのだと気付きました。

線としてのビオトープ

ツル性植物の壁面や、中低木類の生垣などを指します。錦ヶ丘のビオトープには、造成当時、イチョウやコナラ、ムクノキなどの38の中高木と、アジサイやジンチョウゲなどの18の低木が植えられました。晩夏や秋にはヘチマやアケビなどのツル性の植物も実をつけ、子ども達も収穫しています。 昨年行われた造成工事で、新しく南高梅やイチジク、柚子などの実のなる木が植えられ、これからさらにキウイや藤などの花棚もつくられる予定です。

点としてのビオトープ

積み上げられた枯れ木や、草、石などを指します。錦ヶ丘のビオトープには、堆肥場として落ち葉や大きな枝を入れるスペースや、囲いを設けて立ち入れない空間を作り、あえて草が生えるようにしているスペースがあります。

一つひとつの小さなビオトープの世界が合わさって、大きなビオトープが作られているのだと思うと、それぞれの空間に意図や願いを持つことが大切だと感じます。

 

私たち大人が大切にしたいこと

こども環境管理士の勉強をする中で繰り返し出てきた言葉の一つに、「保育者自身が自然に関心を持ち、楽しみ、感動する心を持つ」というものがありました。

保育の中では、よく形に見えないものを言葉にすることがあります。「風が冷たいね」、「おひさまが眩しいけど、暖かくて気持ちがいいね」、「何かいい香りがするよ、どこからするのかな」など、保育者自身も五感を使って環境に向き合い、環境と対話することを大切にしています。

 

「子どもたちに生まれつき備わっている“センスオブワンダー=神秘さや不思議さに目を見張る感性“をいつも新鮮に保ち続けるためには、この世界のよろこび、感激、神秘などをいっしょに再発見し、感動を分かち合ってくれる大人が、少なくともひと理、側にいる必要があります。」(センス・オブ・ワンダー/著:レイチェル・カーソン)

 

私たち大人こそ、感性を豊かにし、美しいものを美しいと感じる心、知らないものに出会ったときにワクワクする心、生まれる命や死にゆく命に尊さや儚さを感じる心を磨いていきたいものです。

今回、こども環境管理士の勉強を通して、ビオトープを見る新しい視点を得た上で子ども達の遊びを見ると、改めて自然がもつ「何にでもなる力」はすごいこと、また、それを活かして遊びを発展させる子ども達は遊びの天才だと感じます。

自然をどのように生かすかは私たち次第。豊かな自然環境がある錦ヶ丘で、心の土壌を存分に豊かにする乳幼児期を過ごす子ども達のために、感性を磨きながら様々な工夫を考えていきたいと思います。

 

【参考・引用】

・日本生態系協会 こども環境管理士 https://www.ecosys.or.jp/certification/exams/#kodokan

・文部科学省 持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development) https://www.mext.go.jp/unesco/004/1339970.htm

・「センス・オブ・ワンダー」(著:レイチェル・カーソン/新潮社)

 

文責:藤﨑

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