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2024.08.16

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絵を描くことの喜び 5歳児(年長組)

「幼児期の表現活動」と聞くとどのようなものを想像されますか?

一般的に踊ったり歌ったり、役になりきって遊んだり…というようなことを想像することが多いと思います。

乳幼児期の造形表現活動は、「美的な体験・感動・驚きという環境から受け止める活動」と「描く、作るという自己を表現する活動」に分けられます。今回は、『描く』ことについてお伝えします。

絵を描くことはすきですか?

皆さんは絵を描くことが好きですか?「得意!」という人もいれば、「苦手!」「描くことは好きだけど、得意ではない」など、様々な思いがあるのではないでしょうか?

では、苦手という人はいつから苦手と感じるようになったのでしょうか?

3歳ごろまでの子ども達の様子を見ていると、クレパスやマーカーを出すと、ダイナミックにクレヨンを滑らせたり、机にまではみ出して描いたりする姿が見られます。クレパスを握っている子ども達は、みんな笑顔いっぱい! 手が汚れるのが苦手ということ以外に、あまり苦手な様子は感じられません。

しかし、3歳ごろから絵を描くことが好きな子ども、あまり好まない子どもが見られるようになります。

なかには、「描けない」と言う子ども達がいます。なぜ描くことが好きから絵が描けないに変化していったのでしょうか。

子ども達は何気ない一言に気持ちが動いてしまう事があります。大人や兄弟の一言で「僕へたくそなんだ…」と思ってしまう事も。

何を描いたのか分からない…こともあるかもしれませんが、発達している段階の子ども達には、「たくさん塗れたね」「大きく描けたね」など認めることが、もっと描きたいという意欲に繋がります。

定型発達で見ると…

子ども達の育ちを見る時に私たちは定型発達という指標と照らし合わせながら、今この子はどの程度の経験ができているのだろうかと観察します。

1歳半から2歳ごろ…

なぐりがきの時期です。ペンを握ると叩くように点や短い線を描きます。その動きの感覚を楽しんでいる時期です。そして、手の動きがスムーズになると、横線や曲線、渦巻きなど画面広く描くようになります。

2歳半ごろ…

同じくなぐりがきの時期ですが、線を走らせながら、頭の中でイメージを描き、「雨!」「ブッブー」等と呟きながら描くことを楽しむ様子が見られます。

3歳ごろ…

クレヨンや太いマジックを使って絵を描くことを楽しみます。自分が描いた絵の内容を話してくれるようになるのもこの時期です。とは言え、3歳ごろの絵は…まだまだ形になっていないものも多いです。人の絵も頭足人(↑上記の写真のように頭から手足が出ている)であったり、同じような丸をたくさん描いて「これはパパ。こっちはママ」と言うように形や特徴を捉えて描いたりすることが多いように感じます。

4歳ごろ…

頭足人から胴体を持った人間をかくようになる時期です。また、知っている物や経験したことを描いたり、画材にも興味を持って、絵の具やクレヨン、マーカーなどを使って描いたりするようになります。

5歳ごろ…

目で見た事や知っている事を絵に描くことができるようになる時期です。リアリズムを求める時期でもあるため、自分の絵を客観的に見て「見たものを描けていない」ことに気付いて描くことを避ける子どもも出てきます。また、絵を描く以外にも塗り絵に興味を持ち細かく色を使い分けたり、絵の具の色を混ぜる面白さに気付くのも特徴です。

年長組の取り組み

年長組では、様々な活動に興味を持ってほしい、絵を描く活動の楽しさも知ってほしいという思いから、次のような活動を行っています。

【経験画】

運動会で経験した楽しかったことを絵に描きました。クラスや学年で経験したことや楽しかったことを話しながら、表現することができました。なかなか手が進まない子ども達もいましたが、保育者が一緒に楽しかったことやその時のことを思い出すことで描くことができました。

【観察画】

保育室に飾ってあるアジサイの花を机に置くと、花を見ながら描き始める子ども達。自由に描くことよりも、実物を見ながら描くことで、苦手な子どもや普段絵を描く活動に参加することが少ない子ども達も「描いてみようかな」という気持ちが引き出されていました。

そこで、自分達で育てている稲や野菜、花などの観察記録を始めました。初めは何を描いたらいいか分からずにいた子ども達でしたが、葉の様子や花、実がなっていることに気付くと、「(梅シロップ)水が出てきている!」「(きゅうり)葉っぱがふわふわしている!」「ここにもお花が咲いているよ!」「(きゅうりとゴーヤ)花びらの形が違うね」などそれぞれの様子や変化に気付き、興味が広がり、深まっていきました。また、絵を描くだけでなく、気付いた事をコメントにして残すとより分かりやすいことにも気付き、50音表を見ながら文字で記録を取る子ども達もいました。

 

今回の活動を通して、改めて「好きな絵を描きましょう!」という課題は、実はとても難しいことだと思いました。頭の中でイメージした物を絵に表し描くことは、大人であっても難しいと感じる人も多いと思います。

観察画や思い出画のように描くものやテーマが決まっている事でイメージができ、絵にも興味を持って描き始めることができた姿が見られました。

また、幼児期は友達の描いている絵を見ながら、真似をして描いたり、カタログのように脈略もなく思いついたものを次々描いたりする姿も見られます。そうやって絵を描く楽しさを十分に感じた子ども達は、頭の中でイメージした絵を紙に描き表現していくようになります。

目の前にある物や経験した一場面、絵本や物語を聞いて想像をしたものなど、「絵に描いてみたい!」という経験が、より絵を描く面白さや楽しさに繋がっていくのだと思います。普段からよく絵を描いている子ども達も、観察画や経験画を通して、さらに様々なことに気付き、より細かく絵に表現できるようになりました。一人ひとりの経験が、周りの友だちへの刺激にもなっていることを感じます。

小学校に就学すると、生活科の時間に観察記録を取ったり、図工の時間に絵を描いたりといった活動があります。少しでも絵を描くことに興味を持ち、好きになって欲しいなと思います。

「見ながらだったら描くことができた!」「これだったらできた!」という経験をたくさん積み重ねながら、絵を描く活動の楽しさを伝えていけたらと思っています。

文責:田中

 

引用

・青木書店「子どもはえがく」 ―さくら・さくらんぼ保育園、姉妹園の子どもたち―

・邦溶舎「3・4・5歳児の発達と保育 乳幼児の遊びと生活」

・日本文教出版「子どもの絵の発達と道筋」https://www.nichibun-g.co.jp/data/education/e-other/e-book/e-other19_kodomo/HTML5/sd.html#/page/1

 

 

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