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2022.10.06

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「さみしい」に寄り添う(5歳児・年長)

2学期もあっという間にもう一ヶ月が経過し、夏の暑さもぐっと落ち着いてきた今日この頃です。

夏休み期間も変わらず登園していた子もいれば、おうちで過ごしていた子もいた夏休みを経てやってきた2学期が始まりました。

お友だちに会えるのが楽しみ!と心待ちにしていた子もいれば、

おうちの人と離れるのが嫌だな、と不安な気持ちで新学期を迎えた子もいる9月。

年長さんになり、できることも増えて頼りがいが出てきたにじ組、そら組の子どもたちですが、環境の変化に心が揺れたり、お父さんお母さんが恋しくなって涙がでることもしばしば・・・。

おうちで背中を押すお父さん、お母さんも「明日こども園いきたくない!」「お休みしたい」と言われると、「気持ちはわかるけど困ったなあ」と思うことも多いのではないでしょうか?

今日は心理臨床の観点から、子どもたちの分離不安(おうちの人と離れることへの不安)にどう寄り添っていけばよいかをお話できればと思います。

 

なぜ不安になるの?

朝の支度から寝るまで、あまり手がかからなくなる年長児。

言葉の面でも流暢さが出てきて、床に寝転がってジタバタ泣きじゃくるということは減ったけど、その分口ごたえすることが増えてきたかもしれません。

できることが増えた分、「行きたくない」「ママやパパと一緒がいい」と言われると、ついつい「もうすぐ小学生なんだから」「もうお兄ちゃんお姉ちゃんなんだから頑張れ!」という言葉が出てしまいそうになりますよね。

しかしまだ子どもたちは5〜6年の人生しか生きていません。

ほんの数年前まではおうちの人を安全基地にしないと何もできなかった子どもたちは、まだまだお母さんやお父さんと離れて自分の力で頑張る練習をしている最中です。

おうちの人が目の前にいなくても、心の中にちゃんといる、だから大丈夫!と思える時もあればそうではない時もある、非常に不安定な時期を彷徨っている発達段階でもあるわけです。

そのため、ちょっとしたことで不安になったり、おうちの人と離れる時に寂しくなったりするのは当然のことなのです。

もちろん「もうお兄ちゃん、お姉ちゃんだから頑張れるよね?」と言われて「頑張るぞ!」と思える子もいますが、「お母さんやお父さんに抱っこしてもらえたら頑張れる」と思う子もこの月齢であればいて当然ということになります。

 

安心できることが一番大事

園に行けなくなる背景の一つに「退行」という概念があります。退行とは、今の月齢(年齢)よりも少し幼いふるまいをするようになることをいいます。

弟や妹が生まれたとたん、上の子がおねしょをするようになったり、駄々をこねるようになったりする現象が退行の例です。

この退行は、ストレスが多くかかっているときや不安が強いときであればだれでも(もちろん大人でも)起こりうる心の機能の一つで、とても自然な現象です。

退行することで、脳のエネルギー消費を少なくしたり、脳をいやしたりする効果があると言われています。

年長になり「しっかりしてきた」と思う子どもたちでも、ストレスや不安があれば退行して昔のように「おうちの人と離れたくない!」と一見わがままにも取れるような言動をして心の安定を図っているのです。

そのため、「園にいきたくない」というお子さんにはまず、心(脳)のエネルギーを回復できるようなアプローチが重要であると考えています。

具体的には、

・小さい頃好きだったおもちゃや絵本などで遊ぶ。

・親子で遊ぶ時間を設ける。

・親子のスキンシップを増やす(おんぶやだっこ、添い寝など)。

・ゆっくり眠れるような工夫をする。

・おしゃべりの時間を増やす。

などが有効です。

「今日頑張って園にいけたらお菓子を買ってあげる」「ゲームをさせてあげる」などの物的な報酬は一時的な効果はありますが、根本的な解決にならず後々逆効果になる(子どもの要求が激しくなる、報酬がないと応じなくなるなど)ケースも多いので注意が必要です。

 

園で行っている「寄り添い」

園で過ごしていると、突然「ママがよかった」と子どもたちから言いにくることがよくあります。突然泣き出すようなこともあります。朝のお別れの時は平気だったけど、いざ離れてみるとやっぱりさみしいと感じることが多いようです。

そういうとき、保育者はなるべくその子の傍らにいて背中をさすったり、抱っこをしたり、膝の上に抱いたりして一緒に過ごすようにしています。

さみしいときの子どもたちは、言葉で元気づけるよりも体感レベルで安心できるスキンシップを十分に取ってあげるほうが効果的である場合が多いため、こういった対応をしています。

体は大きくなったし、言葉も達者になったけど、それでもその子の抱える寂しさや不安は言葉には言い表せないものがあると考えています。

不思議なことに、泣いていた子は保育者が「寂しかったよね」と少し言葉をかけながら寄り添っているだけで、数分経つと「遊んでくる」と気持ちを切り替えて活動に気持ちを戻すことが多いように感じます。

安心の充電がしっかりとできた子は、大人がとやかく言わずとも自分で回復して立ち直る力があるようです。また年長児の場合、大人ではなくお友だちが寄り添ってくれて気持ちを立て直す場面もよく見られるようになりました。

「おうちで頑張ってみているけど、うまくいかない」

「分離がなかなかできない」

とお悩みの方は、一人で抱え込む必要はありません。

園に来ると楽しいことが待っている、という体験の積み重ねや保育者のサポートの積み重ねで、「おうちの人は目の前にいないけど、一緒にいてくれる大人や友だちが園にいる」ということが分かってくると、いつの間にか安定してくるというケースもたくさんあります。

ご家庭の様子と園の様子の情報共有をしながら、その子にとって安心して園で過ごすためには何をしていくべきかを一緒に考えていきましょう。

 

登園しぶりに限らず、おうちで困っていることや疑問に思うこと、もっと聞きたい!などあれば、いつでもお声掛けくださいね。お待ちしています!

文責:津田

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