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2023.03.04

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子どもがいきいきと過ごす園庭環境を考える

錦ヶ丘の大きな魅力の一つ、園庭・ビオトープ。

25年前に、前理事長である堂園 晴彦によりビオトープ『のはら園』が整備され、それまでの園庭から大きく姿を変えました。小さかった樹木は時間をかけて大きく育ち、心地よい木陰をつくり、子ども達に落ち葉のプレゼントをくれています。

そんな園庭・ビオトープは、春になり、今年もつくしが生え始めました。

以前、日本建築学会北陸支部福井支所が主催する『子どもが生き生きと過ごす園庭環境』というシンポジウムをオンラインで視聴しました。シンポジウムの中では、全国の園庭を調査し、園庭での保育・教育の質を高めるための視点や工夫を研究している‟園庭研究所”の方や、幼稚園・保育園の園庭を主体とした園庭コンサルタント・環境デザインを行う‟株式会社コト葉LAB.”の方のお話を聞くことができました。

錦ヶ丘では多くの職員が様々な研修を受講し、学びを共有していますが、園庭の専門家からの学びはなかなか無く、とても新鮮なものでした。

今回は、シンポジウムを視聴して学んだことを、錦ヶ丘の園庭・ビオトープや、子どもの姿に紐づけてお伝えしたいと思います。

 

子どもが意志をもって遊び込める環境を。/「やりたい」の中での「できない」の時間に価値がある。

私たちは日々の保育を考えるにあたり、意図・ねらいを明確にすることを大事にしています。乳幼児期の学びは、人的・物的環境を通して得られていきますので、環境を整えることは保育の意図・ねらいを達成させるためにとても大切なことです。

錦ヶ丘には、アスレチックがあります。子ども達は網梯子やその横にある木の階段を登っていきますが、大人は「ここに足を置いたら…」と伝えたり、身体を持ち上げて手伝ったりすることはしません。子ども達が自分の意志で登ること、自分で身体の動かし方を考える=環境に合わせていくことを大切にしています。

もちろん、登る遊具ですので落下の危険とは隣り合わせ。グラッとした時や、「これ以上は怖くて危ない…」と子どもは自分で判断した時にすぐ助けられるよう、近くで見守ります。「危険だから」といって無くすのではなく、他の要素を大切にしながら、少しの危険の先にある学びを大切に考えています。

また、昨年秋に卒園児・在園時の保護者から寄付を頂いて設置された太鼓橋は、子ども達に大人気!“ぶらさがる”という動きは、現代の日常生活の中でなかなか経験することがない動き。だからこそ、その動きが引き出される環境をあえて設定することが必要なのです。

ぶらさがり、腕や身体を使って向こう側まで渡ることは、子どもにとって自分との戦い。できない時間は、大人でもくじけそうになりますよね。誰かにやらされるのではない、自分の意志で取り組む活動だからこその「できるようになりたい!」という強い意志が、子どもを動かし、試行錯誤を引き出します。その過程こそ、私たちが大切にしたいことの一つです。

気持ちが良い空間は、子どもが決める。/子どもの遊びを信じる。

先日の夕方の出来事です。

園庭で「抱っこして~!」と声を掛けてきた2歳児のAちゃん。抱っこしてクルッと一回りすると空の青さが目に入りました。「空が青いね~ 雲が全然ないよ!」と声を掛けると、Aちゃんは座って手を地面に付き身体をそらせて顔を上げ、「ほんとだぁ!」と空を眺めました。私はAちゃんの横に同じように腰を下ろして空を眺め、ふと「ゴロンしたくなっちゃうね」と呟くと、Aちゃんがおもむろにゴロンと地面に横になり、キャッキャと笑いました。「きもち~い!」と呟く彼女を見て、私も半身体を起こしながらでしたが横になってみました。早春の淡い空色がとても綺麗で、こんな瞬間を大切にしたいなと感じたのを覚えています。

「汚れるからやめて!」と言ってしまいそうな場面ではありますが、この経験からAちゃんは空を眺めたり全身で季節感を感じたりすることの心地よさを、少しでも心と身体に刻んでくれたのではないかなと思います。

心のままに遊ぶ子ども達の“心地よい瞬間”はそれぞれ。大人の軸で“良い遊び”や“悪い遊び”を決めるのではなく、子ども達の遊びの壮大さを信じながら、その先に何を感じて心の栄養としていくのか、見守っていきたいですね。

 

園庭の環境の豊かさ=子どもの経験の豊かさ=育ちの豊かさ

このシンポジウムで、『幼稚園施設整備指針』というものがあることを知りました。

また、この『幼稚園施設整備指針』に基づいて、東京大学が整理した『園庭環境多様性指標』では、以下の15項目が挙げられています。

・土や砂遊び場  ・水遊び場  ・菜園や花壇

・芝生地や雑草地  ・樹木やつる性植物  ・飼育動物

・築山や斜面  ・遊具  ・ひらけたスペース

・道具や素材  ・休憩や穏やかな活動の場所  ・日陰

・園庭と園舎のつながり  ・全体的な配置 ・保護者と地域の方との交流の場所

 

錦ヶ丘の中でも、この15項目の中で割と日常の中で話題にあがっているもの(砂場・菜園・樹木等)と、まだまだ意識して検討が必要と考えられるもの(ひらけたスペース・園舎とのつながり・地域交流他)に分けられます。『園庭の質向上のための6観点7ステップ』も併せ、指標をもって園庭について考えてみることで、偏りの少ない、より豊かな園庭を目指すことができそうです。

豊かな園庭は、豊かな学び、子ども達の育ちへとつながりますね。

また、昨年夏より、ビオトープ管理士の資格を有した青楓緑化さんとビオトープ環境を整備しています。あえて人が立ち入れない環境をつくり雑草を生やしてバッタが住める環境を作ったり、なたおれの木を元気にするために根っこに空気を送り込む工夫をしたりと、取り組みは様々です。専門業者と連携を図りながら、より豊かな環境づくりを続けていきます。

 

最後に…

このシンポジウムには、大学生も多数参加していました。園庭をデザインする授業や、コンテストもあるそうです。

たかが園庭、されど園庭。子ども達の生活の場、学びの場として、室内と同じように園庭環境について考える時間を、錦ヶ丘でも大切にしていきたいと感じました。

 

そして、講師の方が仰った「育てていく園庭」という言葉。園庭づくりには、そこに関わる大人の子ども時代の思い出がカギとなるそうです。

私達の心にそれぞれ残っている「子どもの頃、ワクワクした外遊びの思い出」。職員同士の環境づくりはもちろんですが、ご家庭でもお子様と外で遊ぶとき、親子でぜひ、話してみてはいかがでしょうか。

きっと、子ども達の世界が広がりますよ。

 

文責:迫田

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