お知らせ

2023.10.04

未分類

命に触れる子どもたちの姿(2歳児 くるみ組)

認定こども園錦ヶ丘はチームで保育を取り入れ、現在くるみ組(2歳児)は、保育者が毎日4名〜5名で保育を行っています。
子どもたちの興味・関心に寄り添い、子ども達一人ひとりの声に耳を傾けられることは私たちが行っている保育の醍醐味です。

クラスの人数が20〜27人ほどの大集団で行う一斉保育を行なっていた時期もありますが、何か活動をするにも、遊びを決めるにしても、自分の気持ちを主張することができる子どもの意見や気持ちばかりが脚光を浴びていたように思います。しかし、幼稚園教育要領が2017年に改定され、子どもの主体性を大切にする保育に移行し、私たち錦ヶ丘も少人数のグループを作って保育を行ったり、子どもの思いや考えを大人と対等に話をしながら活動を組み立てるような保育に変化をしています。

今回は私たちが日常的に行っている少人数で保育をする良さを改めて感じた場面をエピソードとしてお伝えします。

 

命と向き合う

夏によく見かける生き物の代表格カブトムシ。

くるみ組でもカブトムシに興味を持ち、飼育をしていました。その他にもカエルやカタツムリ、バッタや蝶も虫かごに飼育し、成長を見守っていました。

9月のある日、虫かごの中を覗くと、暑さが理由でしょうか、ほとんどのカブトムシがひっくり返り、命を落としていました。その他の虫かごの虫たちのも残念ながら死んでいます。

すごい!と思いながら育てていた虫たちも少しずつ子どもたちに脚光を浴びる機会が少なくなり、静かに息を落としていたのです。

 

保育にどう生かすか

私たち錦ヶ丘にはビオトープと呼んでいる宝があります。

このビオトープは命を学ぶ場として約20年程前から活用され、卒園児たちの思い出の場として形を変えながら大切にしている場所です。ここでも命との出会いがありますが、あえて保育室で飼育することで、小さな命を身近に感じ、生きていることを感じる、生かすためにどうすれば良いかを考えるきっかけになると考えています。
まさに今回は死を考える良い場面と捉えました。

 

子どもたちにどう伝える?

虫かごの中の死んでいる虫を見た時、子どもたちはどのような思いを抱くか、一人ひとりの思いを大切に受け止めるために、27名在籍する2歳児を、3つのグループ(9名程)に分け、活動を行いました。

一つ目のグループ

虫かごの中で死んでいる蝶を見つけます。


Aくん「うわ…」
Bちゃん「…(無言)」
第一声はこのような反応でした。きっと衝撃を受けたのでしょう。そのあと次々に子どもたちは今までしてきた経験を話します。

「なんなんさーしようか」「いきていないよ」「はねがばらばらになっている」「おはかまえりにいったよ」このような子ども達の言葉から、虫達を埋める墓を作ることになりました。

 

子どもたちは、ここがいいんじゃない?と、日陰を選び、自ら掘るためのスコップを用意して掘り進めます。少し保育者の手伝いをもらいながら虫かごからそっと虫を取り出し、埋めるのです。

小さい手でそれはそれは大切そうに埋める姿、何も言わなくても手を合わせて「なんなんさー」と言う姿は保育者が「〇〇だよね」「〇〇しようね」などと言う必要は何もなく、心の底から今までありがとうと言っているような姿でした。

 

2つ目のグループ

次はカブトムシです。
かぶと虫のケースの中には生きているものと死んでいるものが混在していました。同じように9名ほどの子どもと一緒にケースの蓋を開けます。

すると、「うわーさわりたい!」「すごい!」と、キラキラした表情を見せるのです。なぜでしょう・・・。それは、子ども達の目には生きている、今まさに動いている虫の姿しか目に入っていないのです。

 

そこから保育者は生きている虫をケースから取り出し、死んでいる虫だけの状態にしました。すると、今までのカブトムシと様子が違うことに気づいたのか、ツンツンと触ったり、「しんでるの?」と、理解する子どもが少しずつ増えてきました。大人にとっては、どうして死んでいるか分からなかったのかな!?と思う出来事ですが、2歳児にとっては触りたい!という好奇心が優っていたのではないでしょうか。

死んでいる姿を改めて直視すると、可愛そうだから埋めよう…という姿が見られました。

3つ目のグループ

梅雨時期から世話をしてきたカエルとカタツムリです。
餌がなく痩せ細ったカエルが一匹。

食べるものは何か子ども達に質問すると、「みず」「はっぱ」など、答えてくれますが、本当は生きた虫やハエなどを食べます。保育者は生きたハエを捕まえて食べさせていましたが、子どもたちの目に触れる機会は少なかったので、ケースの中にあるものも食べているのだろうと考えていたのでしょう。

虫かごの中に餌がないことを伝えると、のはら園を指差し、「あっちにあるよ」と餌のある方を教えてくれました。保育者の手を引きながらカエルの餌がある方(ビオトープ)に駆け出し、そこにケースを置き、カエルが自分で飛び跳ねていくでいく姿を見送りました。

3つのグループとも、虫の種類は違いますが、墓を作ったり、ビオトープに逃したりするなど、小さな命に向き合い、自分の思いを伝えたり、伝えたことを保育者に受け止めてもらうことの喜びを感じていたように思います。

 

エサはどうする?

死と向き合った子どもたち、共通していたのは”餌をあげていなかった”ということで、これはほとんどの子ども達が理解していました。

生きているカブトムシの飼育を続けることにしたくるみ組。

子どもたちに「エサはこれからどうする?」と聞くと、「ゼリーをあげる!」と全員が答えます。

自然界ではカブトムシは何を食べていますか?

何の木によく止まっているか知っていますか?

「ゼリー」と言う答えに愕然としてしまいましたが、これも子どもたちの経験です。これから生活の場を通して、図鑑を見たり友達や大人からいろいろな話を聞き、体験することでいろいろな知識を増やしていきます。教えることより、経験から身につくことの方が何よりも忘れがたいものになることを私たち大人は誰よりも知っています。

だからこそ、答えは伝えず、共に考え共に経験する保育を大切にしています。

 

最後に

くるみ組(2歳児)の子どもたち、27名いれば、27名の受け止め方があります。

死んでいる虫を見てかわいそうと思ったり、友達がやっているから一緒にお墓を作ったと言う子もいるかもしれません。

私はそれでいいと思います。日々の経験が心の片隅に残り、いつかあの時こんなことを感じたな。この感情どこか懐かしく感じる…と心が温かくなる種を蒔いているような思いを抱きながら、子ども達との対話を楽しみました。

一人ひとりの言葉を大切に受け止め、言葉にならない表情を汲み取り、子ども達と共に過ごす時間を大切にできる、私たちの保育が、一人ひとりの心の片隅に残ってくれていると嬉しく思います。

文責:水之浦

当園についてや入園に関しては
お気軽にお問い合わせください